学生の活躍

    世界中で活躍する所属生・修了生の声
    グローバル理工人育成コース シンポジウム2024

    グローバル理工人育成コース シンポジウム2024

    理工人の未来設計 - コース所属生たちのグローバルな活躍 2024年1月10日(水)にオンラインにて開催

    コースの所属生と修了生が、グローバル理工人育成コース(グロ理)を通して得た国際的な経験を後輩の所属生たちに伝えるシンポジウム「理工人の未来設計―コース所属生たちのグローバルな活躍」を2024年1月10日に、オンラインにて開催しました。

    グローバル理工人育成コースでの科目履修や英語学習、海外での経験がどのように将来計画に繋がっているのか、また現在の活躍にどう活かされたのかについて、コース所属生・修了生の3名が発表しました。シンポジウムには、学士課程1年次の学生を中心に、教職員と合わせて260名ほどが参加しました。

    コロナ禍で様々なオンラインでの機会が活用されるようになり、また、収束とともに実渡航も再開している中で、将来国際的に活躍するために、今後の学生生活をどう過ごすかを考える良い機会となりました。

     

    講演に先立ち、林副学長(国際担当)・国際教育推進機構長が開会の挨拶をし、参加学生を歓迎するとともに、グローバル理工人育成コースの意義について述べました。コースがこれまで実施してきた先駆的な取り組みを活かし、これからは東工大に入学すれば全員が実渡航、オンライン問わず様々な国際経験を積める仕組みを整えている、ということを説明しました。参加者に向けて、恵まれた環境の中で周りを見渡し、本シンポジウムで講演される先輩方からのアドバイス含め、選択肢を知り、機会を大いに利用し、自分自身で選び、色々な経験をしていってほしい、という激励の言葉を述べ、開会の挨拶を締めくくりました。

     

    講演1:「ほんの少しの「面白そう」と「やってみよう」から広がる世界と人との繋がり」

    江川 駿明さん 環境・社会理工学院 土木・環境工学系 土木工学コース  修士課程2年 

    江川さんは、2018年に東工大に入学と同時にグロ理に所属。 20228月タイ カセサート大学へ派遣交換留学(4ヶ月)等を経て20243月に上級を修了見込みです。

    江川さんの講演

     

    江川さんは、まず、東工大に入学当時の自身を振り返り、過去に海外経験が多くあったわけでなく、留学や英語学習については漠然とした思いを持っていたと述べました。そして学士1年時から現在までを通しての経験を、「主な活動」、「語学関係」、および「本音・気持ちの変化」を軸に、時系列で図示し説明しました。

     

     次に、修士1年の8月から4カ月間カセサート大学に派遣交換留学を実現させた体験について、学士4年冬の申し込み時点からの流れを説明しました。同大学では自身の専門に近いエネルギーと資源がテーマの修士課程のコースをミャンマー、インドネシア、フランスなどから来た留学生と共に受講しました。伝統競技“ムエタイ”を実践するタイならではの授業を受ける等、専門以外でも多くを学び、授業以外でも、大学主催のツアーや料理教室に参加をする等、積極的に活動をしていたということです。またバンコクの交通や気候、食事についても写真とともに紹介しました。

     

    そしてこの派遣交換留学の前後に行っていたグロ理等での活動について具体的に説明しました、学士4年時にはキャンパスアジアが主催するオンラインプログラムに参加し、ディスカッションが上手くできずに絶望感を味わった経験もありましたが、修士1年の夏に参加したMIT語学タンデムで、パートナーとなった日本語を学ぶMIT学生の学ぶ姿勢から勇気をもらったということです。そして修士2年時に履修した「グローバルリーダーシップ実践」では、東工大にいる留学生と共にグループワークやディスカッションする機会を通して、多くを学び、グループ発表で優秀賞を取ることもできました。さらに、グロ理の提供する語学学習支援を利用し、入学当時は600点だったTOEICの点数を300点近く上げることができたことも、派遣交換留学の選考を通過したことに貢献しました。このように東工大が提供する授業やプログラムを通して、実際の留学以外でも多くの刺激を受けることができた、と振り返りました。

     

     江川さんは学生生活を通し、やって良かったことの一つに「色々な人と話す、頼る」を挙げ、グロ理のスタッフや留学促進団体FLAPの学生に相談することで、選択肢が広がり、あらゆる可能性を検討することができたと述べました。また少しの興味でも「面白そうだからやってみる」こと、そして「納得のいく決め方をする」ことの例として、留学先をタイに決定する際に自身で作成した他国との比較表を紹介し、自分の軸や価値観に照らして数値化し、どこが最適であるのかを決定することができたということです。 一方で、個々の大学についてや留学の要件などの情報を収集し始めたのが遅く、必要な英語試験のスコアをクリアできておらず選択肢が狭まれてしまった、等の事柄を反省点として挙げ、参加者の参考にしてほしいことを伝えました。

     

    最後に、江川さんは早い段階で目標を設定することはなかったが、グロ理への所属を含め、少しの興味・直感から一歩ずつ始め、気づけば色々と結果がついてきた経験から、参加者に対しても、興味・アンテナを大事し、自分に素直に、学生生活を楽しんでいって欲しい、という言葉を送り、講演を締めくくりました。

     

    講演2:「使える機会を使い倒す」

    山中 理沙 さん 環境・社会理工学院 建築学系 建築学コース 修士課程2年

    山中さんは20228月から1年間の派遣交換留学(スウェーデン王立工科大学)等を経て、20243月に上級を修了見込みです。

    山中さんの講演

     

    山中さんはまず、東工大入学する前から現在まで、「グローバル理工人」になるためにどのような道を歩んできたかを時系列で示しました。子供のときからホームステイを経験する等、海外は身近であったため、必然的に留学に憧れがあったということです。そして大学入学当初から、英語で行われる教養科目を履修する等、英語学習を積極的に進める中で、グロ理には「入っても損はない」というくらいの気持ちで所属を決めたと述べました。

     

     やる気満ち溢れていた一方で、系所属後は、専門の課題などで忙しくなったことや、学士3年時に新型コロナウイルスの流行が起こり、海外留学へのモチベーションは低下してしまいました。その中でもグロ理の「グローバル理工人入門」「グローバル理工人国内研修」、「グローバルリーダシップ実践」、等の授業を履修することにより、継続的に海外や英語に触れる機会を持つことができました。履修を進めることによって、グロ理が提供する英語e-learning等の語学学習支援に複数回選考してもらえるようになり、英語力を高めていくことができたことで、低下したモチベーションを回復することができました。また上記授業では、後に留学先でも仲間となる友人もできたということです。

     

    さらには、大学公認学生団体東工大ACTIONが運営する語学パートナー制度を利用し、タイの学生と半年間タンデムを行ったり、第2外国語の選択科目を履修したりと、「手の届く機会はとりあえず活用」し、留学への道を少しずつ作っていたと振り返りました。

     

    留学を本格的に検討し始めたのは学士課程4年時であり、研究室選びも、留学を応援して下さる先生がいるということも考慮に入れたということです。そして1年間行くのであれば修士1年夏からがベストと判断し、学士4年時の秋に出願し、スウェーデン王立工科大学(KTH)への派遣交換留学を実現させた一連の流れを説明しました。選んだ理由としては、建築学を学ぶ上でのヨーロッパのあこがれがあったことと、KTHについて東工大の先輩から留学体験談、指導教員から意見を聞き、最終的に決断したということです。

     

    留学生活についても沢山の写真と共に紹介しました。スウェーデンの大学はディスカッション中心の授業が主であり、中身は濃いがスケジュールがゆったりと組まれているため、授業以外にも友人と旅行に出掛けたり、週末はPubに行くなど、充実した時間を過ごすことができたと述べました。

     

    帰国後は、培ったディスカッションスキルなどを活かして学修を進めながらも、留学中に知り合った仲間と共に、留学促進団体FLAPに加わり、「東工大生にとって留学を当たり前の選択肢に」するべく、留学体験談の発信や、相談会などのイベントの活動に精力的にかかわっているということです。

     

    山中さんは最後に、参加者の皆さんはグロ理に所属するという第1歩を既に踏み出しているので、今後大学からのメールニュースを読んだり、先輩の情報をただ受け取るだけでなく、利用することの大切さを強調し、沢山の機会を自分のものにしてほしい、という想いを伝え、東工大とグロ理への感謝の言葉と共に講演を締めくくりました。

     

     

    講演3:「とりあえず経験にしてみよう」

    石浦 史也さん 日本製鉄株式会社 勤務

    石浦さんは2013年に東工大4類に入学。アール・ゼ・メティエ留学(1年)等を経験し、20203月上級を修了しました。同年3月に工学院機械系ライフエンジニアリングコース修士課程を修了し、現在は日本製鉄株式会社に勤務しています。

    石浦さんの講演

     

    石浦さんは冒頭で、昨今のAI関連市場規模の急激な伸びについて説明した後、アインシュタインによる「情報は知識ではない」、「知識とは唯一経験から得られるものである」という言葉を紹介し、AIによって情報は簡単に手に入る世の中で、「情報」で満足せず、「経験」にしませんか、と呼びかけました。

     

    石浦さんはグロ理が設立した年に入学し、所属したグロ理1期生です。入学当初は「なんとなく面白そう」ということで所属しましたが、学士3年生まではサークル活動などで忙しく過ごし、グロ理の授業を受けるのみで留学に積極的にはアクションをおこすことはなかったということです。しかし学士4年の春にグロ理の超短期海外派遣でフランスに行ったことが、人生の大きな転機となりました。当初は軽い気持ちで参加しましたが、現地での学生交流や講義、研究室訪問で手ごたえを感じたことで長期留学への希望をもつようになり、太田先生に協力を仰ぎ、訪問したアール・ゼ・メティエの教授に受け入れを直接交渉し、承諾を得たということです。

     

    語学学習などの準備期間を経て、修士1年の春にフランス留学が実現し、実際に渡航してからの留学生活について詳細に紹介しました。フランスの講義はグループワークが多く、石浦さんが苦手としていたプレゼンテーションの授業では、色々な人から批評を受ける機会が多く、落ち込むこともあったがとても鍛えられたということです。クラスメートには、多種多様な国籍や文化的背景を持つ人、また子育てがひと段落ついた人など、年齢も様々であり、彼らとの交流を通じて勉強以外の多くの学びを得たということです。またフランス留学だからこそ得たメリットとして、芸術に触れる機会が多く、芸術に対する新しい視点をもつことができたことを、訪れた美術館の写真と共に言及しました。

     

    苦労したこととしては、9月入学が大半のフランスで4月入学をしたため、カリキュラム上の苦労だけでなく、はじめは全く友達ができなかったこと、また物価が高かったことなどを挙げました。しかしながらテニスラケットを手にコートに出向き自ら友達を作りにいったことで、コミュニティーが広がったという経験を共有しました。

     

    次に、上記のような活動が、社会人となった今どう活きているかを説明しました。石浦さんも従事する日本の製造業は現在、高度経済成長期に立ち上げた設備の老朽更新および少子高齢化に対応するためのDX化に伴い、大型設備投資が急速に増加しているため、若い人でも新しい設備の立ち上げに関わるチャンスがあるということです。実際に石浦さんも、溶接機のような重要設備の立ち上げに関わる中で、海外製溶接機のリモート立ち上げを入社一年目で一任されました。これは大学時代の海外経験が会社内でも認められた結果であり、グロ理が社会人生活でも活かされていると述べました。

     

    石浦さんは最後に、冒頭で紹介したアインシュタインの言葉を繰り返し、情報を得て満足するのではなく、留学を含め学生のうちにできるだけ様々なことをチャレンジし、経験を知識にしていって欲しい、という参加者への言葉で締めくくりました。

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    講演後、国際教育推進機構 太田絵里特任教授の司会で活発な質疑応答が行われました。留学で大変だったことや、英語力の向上について、さらに留学中のパートナーとの関係維持方法といった内容まで、たくさんの質問が寄せられ、講演者がそれぞれ自身の体験をもとに回答しました。

     

    最後に、グローバル人材育成推進支援室長である野原佳代子 環境・社会理工学院 教授が挨拶をし、講演者や協力者への謝辞を述べました。野原教授はまた、東工大の国際教育は、海外に行ったり英語を勉強するという段階から一歩進み、留学する学生が経験することの幅のみならず、経験を伝える表現の深さも増している、という見解を述べました。質疑応答で多く出た英語学習に関する質問に対しては、自身の過去のイギリス留学での体験を共有し、苦労は誰にでもあるということを示しました。グロ理は色々な経験の機会を提供してくれるだけでなく、次のステージについても一緒に考えてくれる場でもあることが、東工大にとっては大きな存在であり、今後も色々な形で発展していくことを説明しました。最後に、それぞれの学生が、自分の興味のあることを色々な経験によって深め、大いに議論し、広げていって欲しいと、参加学生への期待と応援の意を伝え、シンポジウムは閉会しました。

     

    記念撮影の様子(左上から)石浦さん、太田絵里 国際教育推進機構 特任教授、江川さん、山中さん、野原佳代子 グローバル人材育成推進支援室長、林  副学長・国際教育推進機構長、村上理映 国際教育推進機構 特任准教授

     

    Q&A 

    質疑応答では、沢山の質問が寄せら、講演者がそれぞれ自身の体験をもとに回答しました。以下に本シンポジウム中に回答できなかった質問と、講演者からの回答を掲載いたします。

    質問 回答

    留学の経験は世界観や価値観にどのような変化をもたらしましたか?

    ・海外へ旅行したことはありましたが、どっぷり現地に浸かって生活したことはなかったので、新しい発見や学びの連続でした。特に、現地の学生と一日中一緒にいると、現地で流行っているものや楽しみ方、文化などをよく知ることができました。同時に、日本という国の見られ方や特徴を客観的に認識することができ、日本を誇りに思える部分とそうでない部分がよく分かりました。あとは、タイは自分の肌によく合うので、将来的にも住める(住みタイ)と確信しました。(江川さん)

    ・まず第一に、以前より失敗を恐れなくなりました。結構完璧主義なタイプでしたが、英語もあまり上手くない中で上手くこなしていくには、良い意味でプライドを捨てなければならない毎日でした。自分は挑戦者側であって、授業でのディスカッションの際にも胸を借りるつもりでとりあえず思いついたことを言ってみるなど、少しマインドを変えることでとても楽になりました。第二に、日本に貢献したいという思いが強くなりました。以前は海外の良いところばかり見ていた気がしますし海外志向だったのですが、実際に海外に住んでみると日本が優れていると思う点が見つかりました。日本へより愛着が湧き、新卒では日本企業で働こうと思うようになりました。(山中さん)

    ・一番大きな変化は危機感を持つことができたことだと思います。留学先のクラスメイトは皆少しでもよいキャリアを歩むために必死に勉強をして、自分をアピールしていました。常に競争させられているため頑張らざるを得ない環境であったと思います。東工大生が海外の大学生と比較して劣っているとは感じませんでしたが、比較するとまったり気味であり、社会人になってからは段々と差がついている印象です。(大学院卒業したのに英語をほとんど話せない人がここまで多いのは日本くらいかも?)(石浦さん)

    初めての留学で一番戸惑ったことは何だったのでしょうか?

    一度訪れたことがある国だったので大きなカルチャーショックなどは受けませんでしたが、授業の手続きや学生証の受け取りに手こずって、戸惑いました。そんな時は同じ寮で知り合った他の学生に助けてもらいました。また、想定していた講義が取れないことが判明し、さらに一部オンラインという授業形式も事前に知らされていなかったので戸惑い、衝撃でした。(江川さん)

    ・日本で実家暮らしの私にとっては、海外で学ぶことよりも、海外で一人暮らしをするということの方が戸惑いとしては大きかったのかなと思います。私が通っていたKTHは留学生が多くいたので、大学のシステムが整っており、また留学仲間も多くいるため、大抵の問題は仲間や事務に聞くことで解決することができました。日本では一人でも生きていけるタイプだったので、留学中に日々友人と助け合いながら生活をするようになったというのは個人的には大きな変化でした。(山中さん)

    ・一番戸惑ったのはやはり入寮初日です。寮までたどり着くことはできたものの、事務員の人は英語が通じなかったため手続きでかなり手間取りました。相手がイライラしていることは理解できるものの、フランス語であるため理解できず途方に暮れたのを未だに覚えております(結局通りがかった人に助けてもらいました)。(石浦さん)

    自分に足りないものを追求していくと多くの課題が見つかったと思いますが、ほとんどのものを克服できたか聞きたいです。

    ・私は苦手なことと向き合うことが苦手なので、自身の課題を見つけられることは素晴らしい強みだと思います。全てに太刀打ちしようとすると圧倒されてしまう気がするので、できるところや自分が得意そうなところから始めて、少しずつ消化していくのがいいのではないでしょうか… マインドセット的な話で恐縮ですが、私は何か課題や不安に当たった時には、ネガティブなことは考えず、その先にあるポジティブな状態を意識するようにして、あまり自分にストレスをかけないように乗り越えています。(江川さん)

    ・私自身の生き方としては、できないことを見つけるよりもできることを見つけるというスタンスです。これは留学中に学んだことでもあるのですが、できないことは他のできる人にお願いできるのがグループワークの良いところであるという考えです。留学中は特にグループで活動することがほとんどだったため、自分が貢献できることは何かを考え続ける毎日でした。その上で、どうしても自分に足りないものを克服しようと思う際は、それを持っている人を真似したり秘訣を質問してみたりするのが良いと思います。自分が克服したいものを全てを克服できたとは思いませんが、全体的に自分が目指す姿には少し近づけたのではないかと思っています。(山中さん)

    ・足りないものは無限にあると思うので、優先順位をつけて順次克服するしかないと考えております。特に社会人になってからの業務内容は学生自体は触れたことがない分野が多く勉強の毎日です。(質問の回答になっておりますでしょうか、、、)(石浦さん)

    自分が興味のあることに対して、その興味を深めたいときには、どのようなアプローチが有効だと感じますか。

    ・楽しいと思えるやり方や自分が夢中になれる環境を作ることだと思います。自分の場合は、同じ興味を持つ誰かと話したり、第三者に伝えたりすることが大好きなので、そのような環境を作るようにしています。(江川さん)

    ・私は興味はあるけれどもやったことがないことについては、とりあえず手軽な方法で始めてみるかなと思います。例えば、留学前に少しだけでもスウェーデン語を勉強しておこうと思ったので、思い立ったときにまずはDuolingoというアプリで手軽に少しずつ勉強を始めてみました。他には、その興味のあることに対してすでに考えを深めている人と話してみるかなと思います。そのようにすることで実際のアプローチも見えてきますし、より具体的にやることがわかると思います。(山中さん)

    ・興味はあるけれども、なにかしらのハードルがあるということでしょうか?まずは抵抗感が低いものからトライしてみることがいいと思います。スポーツであれば初心者向けのイベントに参加してみたり、英語であれば字幕付きで吹き替えなしの映画を見てみるなどでしょうか。(石浦さん)

    山中さんは建築の具体的などのような勉強をスウェーデンでされたのですか。

    ・私の興味は建築より都市寄りだったので、KTHでは都市計画のスタジオを取っていました。スタジオに関しては東工大とあまり大きな進め方の違いはありませんが、リサーチの時間がたっぷり取られていた印象です。また、留学の制度的に自由に授業が履修できたため、不動産や交通の授業など、専門の範囲外も履修していました。(北欧での建築の授業については、留学促進団体FLAPのポッドキャストで詳しく話しております。ご興味あればぜひお聞きください)(山中さん)

    留学の際の選考(試験、英語要件、GPA、面接など)の準備はどれくらいの時間がかかりましたか?

    ・留学選考のための語学試験などは受けておらず、当時持っていたTOEFL ITPの点数で応募しました。実はこれは不本意で、応募までに新たに受験しようとしましたが、動き出しが遅くて間に合わなかったのが正直なところです。また、当時習っていたオンライン英会話の先生に面接の予行演習をしてもらい、英語の面接に備えていました。(江川さん)

    ・英語要件に関しては、毎年1回は試験を受けていたので、留学出願前にそのために受けるということはしていません。面接に関しては、先輩にどんなことを聞かれるかを聞いて、確実に出そうな質問の回答を英語で考えておきました(研究内容、志望動機、どうしてその学校にしたのか等)。時間をかけたのはどちらかというと奨学金の出願の方でした。実際に何がやりたいのかを具体的に書くために、その国・大学で何が行われているのかを調べて、動機と結びつけて文章にしました。1度時間をかけて書いておくと自分のやりたいことも見えてくるので、行きたい場所が決まったら早めに練っておくのはおすすめです。(山中さん)

    ・英語学習などは継続して行っておりましたが、選考のための準備はあまりしておりません。私の場合まだ枠が空いている大学へ2次応募で受験したため、GPAなどもあまり見られませんでした。フランスのグランセコールなどは教育レベルは高いけれども知名度が低いため狙い目かもしれません。(石浦さん)

    英語の勉強でまず何から始めるべきか教えてほしいです(現在TOEFL-ITP:480)

    ・これは私自身も課題なのですが、自分がモチベーションになる学習方法を見つけることでしょうか、と言いつつ、とりあえず何かしら始めてみないと分からないものです。例えば、なぜ英語を使えるようになりたいのか、どんな姿が理想なのかをイメージして認識するといいかもしれないですね。語学試験で点数を取りたいのか、プレゼン力を付けたいのか、一旦の目標があると、それによって学習方法は異なると思います。私も理想にはまだまだ程遠いのですが、一緒に頑張りましょう…!!(江川さん)

    ・求めている回答でなかったらすみません。まずはモチベーションを上げることだと思います。例えば、英語を強制的に使わないといけないスピーキング演習などの授業を履修することで、私は危機感が生まれて勉強をしようと強く思えました。これらの授業には英語を流暢に話す留学生が多くいる場合も多く、英語に苦手意識があると大変に感じると思いますが、良い練習になるはずです。他にはやる気を出すために、超短期などの留学に申し込んでとりあえず海外に行ってしまうしまうのも手です。一緒に英語を頑張る仲間もできるかもしれません。(山中さん)

    ・(求めている回答かわかりませんが)ある程度英語はできると思うので自分の弱点を明確化することが大事だと思います。取っ掛かりが欲しいという意味であれば、今日1日やったことを30秒くらい英語でしゃべってみるなどがおすすめです。日本語で考えて英語に翻訳するのではなく、英語で考えて英語で話すことができるようになるのが理想です。(私の指導教員がよく言っていました。)(石浦さん)

    英語学習について、毎日継続してやっていましたか?やっている場合は、どのくらいの時間をとって学習していましたか?

    ・交換留学に応募するまで定期的な学習はしていませんでしたが、留学が決まってからは、英語開講の集中講義を取ることと、出国まではほぼ毎日30分のオンライン英会話をしていました。私は一人で淡々と継続することが苦手なので、強制的に行う環境(お金を払って英会話を申し込む、授業を取るなど)を作ってなんとか継続してました。(江川さん)

    ・留学の出願をするまでは英語学習はほとんど行っていませんでした(年1回の資格試験に向けて勉強するくらいでした)。しかし派遣交換留学の東工大の面接において英語力(特にスピーキング)に関して実力が足りないことを指摘され、そのあとはEnglishCentralで毎日英会話レッスンをしたり、スピーキング演習を履修して英語を話す機会を作っていました。研究も忙しかったため毎日少しずつではありますが、本当に忙しいとき以外は続けていました。(山中さん)

    ・留学前は通学の電帳車の中で30minほど単語帳の勉強をしておりました。社会人になってから勉強する習慣が無くなりTOEICの点数が大幅に下がったので、最近アプリで単語の勉強をするようにしております(1日15分くらいですが)。(石浦さん)

    海外の大学で研究を行う際に必要な英語力はどの程度のものなのでしょうか。

    ・私は海外で研究した経験がないですが、東工大で英語が公用語の研究室に所属している身として、論文の読み書きはAIツールなどを駆使できるので、やはりコミュニケーションを取る姿勢とプレゼン力が大事ではないかと感じます。それは日本で研究を行う場合でも同様だと思います。ただ、求められる英語力が仮にあるとするならば、国や所属大学によって異なると思うので、一概に言えないです。(江川さん)

    ・求めている回答とは違うかもしれませんが、実際に留学してみて感じたのは、英語力よりも間違いを恐れずにどんどん話すことができるかの方が大切だということです。授業や研究では専門用語が飛び交うため、普段英語で研究をしていないと日常会話レベルではどうしても苦労すると思います。そんな中で、向こうで対等に話せるようになりたいのなら、正しい言い方は分からない場合でも、とりあえずしゃべってみることが大事です。ほぼ英語力0で留学していた他校の日本人の友人がいましたが彼は誰よりも積極性が高かったため、結果的には誰よりも上達していました。テキストで英語を勉強するだけではなく、英語でディスカッションするような授業であったり留学生との交流の機会などにどんどん参加していくことが効果的な準備になると思います。(山中さん)

    ・留学先で行う研究に関する知識がどれくらいあるかに依存すると思います。私の場合は研究室で流体力学を勉強した上で流体力学に関連する研究を行ったため、流体力学の専門用語+日常会話レベルの英語力でも対応可能でした。事前知識がない分野だとかなり高いレベルの英語力が必要になると思います。同じ大学に高分子に関する研究を行っている人がいましたが、何を話しているのかさっぱりわかりませんでした。(石浦さん)

    ・留学に行ってから、留学する前にこれをやっておけばよかったという事はありましたか?

    ・東工大にいる沢山の留学生と仲良くなっておけば良かったと思いました。これは留学する側になって始めて気付いたのですが、母国を出て勉強や生活する学生はやはり何かしらの意志や関心がある人が多いので、せっかく世界中から学生が集まっている環境を活用して、色んな留学生と話して視野を広げて刺激を受けたら良いと思います。また、必然的に英語の実践にもなりますので、友達作りの気持ちでもイベントや英語の講義に参加してみてください。(江川さん)

    ・やはり英語で話す力をもっと身につけておくことだと思います。もちろん向こうにいる間に慣れてくるのですが、あらかじめ身につけておけば、最初の3ヶ月くらいの過ごし方が変わったのではないかと思います。あとは帰国後に役立つ話になってしまいますが、1年間研究を全くしないと忘れてしまうので、渡航前に丁寧な資料を自分用に作っておくと良かったと思いました。(山中さん)

    ・フランスの場合ですが、フランス語をもっと勉強しておけばよかったと後悔しています。ほとんどの人が英語を話せますが、年配の方や地方の人たちは英語が得意でない人も多く、もう少しフランス語を話せれば色々な経験ができたかなと思います。(石浦さん)

    卒業を遅らせずに、長期留学に行く方法はありますか?

    ・長期をどの程度と捉えるかによりますが、私は実際M1で4ヶ月半の留学をして、2年間で大学院を卒業する予定です。また、周りにはちょうど半年間留学して、2年間で大学院を卒業する人もいます。ただ、研究や就活との兼ね合いもあるので、事前に指導教員との相談や準備はいずれにしろ必須です。(江川さん)

    ・私自身は卒業を遅らせていますが、周りには学部を早期卒業して卒業を遅らせずに留学している人は多くいました。これに関しては、系の方針や研究室の教授の方針にもよると思うので、早めに確認しておく(先生や先輩に聞く)べきです。ちなみに建築学系から長期留学(1年間)する人は、多くの人が卒業を遅らせている印象です。個人的には、卒業が遅れてしまったとしても留学に行くことには大きな価値があると思っています。奨学金も多く準備されていますし、物価が安い国もありますので、金銭的には決め方次第でなんとかなるのではないかと思います。また留学の1年間がキャリア的にマイナスに働くことはないと思いますし、就活などでもプラスになると感じています。(山中さん)

    ・事前に指導教員に相談しておくことが大事です。東工大卒業にこだわる場合、単位の互換or早期卒業が必要になるためきちんと準備しておくことが大事になります。金銭的な理由かキャリアへの影響を心配してなのかわかりませんが、グロ理の方に相談してみるのも手かなと思います。(石浦さん)

    どれくらいの予算で留学を行ったのか知りたい。

    ・タイ留学では、JASSOからの奨学金7万/月でほとんど生活費(寮費、食費など)は賄えていました。プラスで自費になったのが、往復航空券10万円と複数回のタイ国内旅行費くらいだと思います。詳しい内訳は、留学体験談に記載しているので参照してもらえると幸いです。(江川さん)

    ・予算に関しては、先輩の体験談を読んで200万くらいという概算でした。実際の決算としては、旅費を除いた費用が180万円ほどでした(内訳:往復飛行機20万円、保険10万円、寮代7.5万円/月、生活費6万円/月)。奨学金は留学を対象にしたもの(Jasso、スカンジナビアササカワ財団)と、修士課程で貸与でいただいているもの(Jasso)があったので、それによって費用の多くはカバーできました。それにプラスしてヨーロッパでたくさん旅行をしたので、旅費がこれと同じくらいかかっていて、それは今までの自分の貯金でまかないました。(山中さん)

    ・フランスは補助金を申請しないとお金がかかりますが、学生向けの補助金(外国人を含め多くの人がもらえる)が多くあるため、基本的国からの奨学金(Jasso)で対応することができました。旅行代はさすがに賄うことができなかったので貯金を数十万切り崩したと記憶しております。(スペインやイタリアは結構安価ですがイギリスは本当に高かった!!)(石浦さん)

     

    参加者の声

    今回のシンポジウムでお話を聞いたお三方の内容で共通していたのが、「とにかく経験すること」である。大学では学業やサークルなど様々な経験を積む機会がある。しかし、機会はあっても自分でそれを活かさなければ何も得られないのは当然のことである。今回発表してくださったお三方はそのような機会を自分でものにし、経験を積んでいた。

     

    私は今まで海外に行ったことがなく、留学についてはあまり知識がありませんでした。しかし、この講演を聞いて、留学は自分の視野を広げるだけでなく、英語力やコミュニケーション能力、問題解決能力など、社会に出て役立つスキルを身に付けることができるということを知りました。また、留学先の文化や人々と触れ合うことで、自分の価値観や考え方を見直したり、新しい発見や感動を得たりすることもできるということを感じました。 私は将来的には国際的な仕事をしたいと考えていますが、そのためには英語力だけでなく、異文化理解や対人関係の構築なども重要だと思います。この講演を聞いて、留学はそのような能力を養うのに最適な機会だと思いました。もちろん、留学には費用や時間、勇気などのハードルもあると思いますが、それを乗り越えて得られるものは大きいと思います。私も今後、留学の機会があれば、積極的に挑戦してみたいと思いました。

     

    今回のシンポジウムを受けて、やはり「挑戦すること」が重要なのだと感じた。始めることにためらいがあるようなものでも、実際にやってみると楽しかったりやりがいを感じたという経験は、グローバル理工人入門でのインタビューを通しても経験はしていたが、今回のプレゼンテーションを受けて、さらに留学にチャレンジする上でグロ理のe-learningなどの支援制度が助けになるだけでなく、留学をして全く異なる環境に身を置くことで、コミュニケーションなどの多くのスキルを身につけることができるということを再認識した。

     

    「周りにある機会は逃さないようにする」「迷ったらとりあえず始めてみる」といったようなことはよく耳にするので、常に心がけているつもりでいた。しかし、講演者の方々のエピソードを聞いて、自分の行動力はまだまだ限界でない、もっといろんなことに挑戦できると感じた。  東工大に入学する前から国際経験には興味があったので、できるだけ早く学部1年や2年のうちに留学をしてみたいという気持ちがあったが、今回の講演を聞いて、ただ英語力があるだけでは実りある留学経験をすることができないと思い、じっくりと準備をしてから留学に臨む方がよいと考えた。  江川さんがお話しされていた「留学に行くことを目的化しないで、目標をアップデートしていく」という言葉が印象に残った。今までは「とにかく国際経験を積もう」という気持ちで闇雲に留学することを目指していた気がする自分にはとても考えさせられる言葉であった。留学で自分を普段とは異なる環境に置くことの意味と意義を今一度考え直してみたいと思う。

     

    海外にいきたい、英語ができるようになりたい、という風に考えるのは簡単だが、それを行動に移せるかどうかはまた別の話である。これからの学生生活を過ごすにあたって、やりたいことには挑戦する、という姿勢をもって頑張りたいと思う。留学先は欧米だけではなく、北欧や東南アジアという選択肢があることを知ることができてよかった。

     

    ・TOEIC、TOEFLの基準を満たして留学に行ってもプレゼンでは苦労するし会話で躓いてしまうという厳しい現実も聞いて過度に自分でもできるんじゃないかという甘さを抱くことも無くなったと思う。実際に留学や海外での研究に触れた人の話を聞くことはそのレベル感を理解する上で役に立った。また驚いたこととして海外に行ってみたい、街並みに興味があったという小さな理由から海外へ飛び出した方が多いというのは意外だった。私も以前からドイツの街並みが綺麗だなと思っていたので留学をするならドイツへ行ってみたいなと思った。

     

    ・ 特に印象的だったのは、先輩方がどのようにして研究室の活動と就職活動を両立させたかについての話でした。また、留学中に実際に行った研究やプロジェクトについての話も非常に興味深く、留学が単なる学術的な学びだけでなく、実践的な経験を積む絶好の機会であることを教えてくれました。

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