学生の活躍
世界中で活躍する所属生・修了生の声
World Universities Debating Championship (WUDC) に参加して
工学部3年 海宝慎太郎
僕は,2015年12月から年をまたいでギリシャで開催された学生英語ディベート世界大会(World Universities Debating Championship)に参加しました。僕は東工大ESSに所属しており,機械科学科3年で同じくESS所属の林政洋とペアを組み,EFL(English as Foreign Language)部門の決勝トーナメントまで進出し。Best 8の成績を残しました。決勝トーナメントでは唯一の日本チームであり,東工大ESSとしても初の快挙でした。
今回は,グローバル理工人育成コースで募集していた「学生の自主企画による海外派遣ププログラム」に応募し,本大会に参加する機会を得ました。この派遣プログラムは,内容をすべて学生が作り上げます。そのプログラムの一環にWUDCへの参加を盛り込みました。

EFL決勝トーナメントセミファイナルの林くん

会場の様子
まず英語ディベートとはなにか簡単に説明します。僕たちESSでやっているディベートは英国議会式というもので,その名の通りイギリス議会の行う討論がモデルになっています。ある決められた論題と賛成反対のサイドが与えられ,15分の準備時間の後、それぞれ7分の立論スピーチをします。スピーチに要求されるものは,ジャッジ(写真下:最前列の8人)と呼ばれる第三者を説得するための論理的構成力,英語表現力,議題に関わる適切な知識などです。より説得的な,論理的なスピーチをしたチームが勝利します。
今回の世界大会では5つの大陸から国籍,人種の多様な1500名の学生が集まりました。僕たちは予選・決勝トーナメント合わせて14か国のチームと当たりました。僕たちが参加したEFLという枠は、ヨーロッパ諸国・アジア・南アメリカなど,英語を母国語としない人のためのトーナメントで,他にESL(English as Second Language)とEPL(English as Primary Language)があります。EFLでは予選9ラウンドの合計点数の上位8チームが決勝トーナメントに進みます。ESLでは今年はハーバード大学のチームが世界一に輝きました。グランドファイナルの動画はこちらです。

コンサートホールで行われたグランドファイナル
大会に参加して,本当にたくさんの国のディベーターと会えました。それはもちろんそれだけでとてもいい経験でしたが,一番よかったのは,国籍など背景豊かな出場者から出るスピーチの内容でした。
アメリカの学生は「憲法は定期的な見直しと,信任,改正の手続きを必要とすべきだ」というモーションにおいて,憲法改正容易化の危険性の例として最近話題のドナルド・トランプの憲法改正によるイスラム教徒の迫害の可能性を描写しました。それに対しドイツの学生は,ヒトラーが憲法を都合良く変えたことを歴史の事実として提示しました。ジンバブエのディベーターは,芸術に関する議題で,ジンバブエには戦争の悲惨さを後世に伝えるアートがあることそれがいかにして次の悲劇を抑制しているかを語りました。
今回例示された議題は,傭兵・芸術・貧困・人種差別・東アジア問題・憲法・労働組合・フェミニズム・刑罰など多岐にわたるものでしたが,それぞれの話に,自国の事情や経験を巧みに組み合わせた説得的な立論が多く見られました。僕自身が知らないことばかりでおもしろいディベートが多かったのですが,同時に,自分はもっと日本のことを知らなければならない,そうでなければ世界のディベーターとは競えない,と実感しました。ディベートだけではなく一般的に,他国の人と競るためには,自分の強みとして自国のことにまずとても詳しくなることが大事であることも理解しました。
また,僕たち日本人の多くは,世界には人種差別や独裁政治,戦争があることをネットや本やニュースで知っていますが,直接目にしたことがある人はほとんどいません。しかしディベーターの中にはまさにそれらを体験している,あるいはその中に生きている人も少なくなく,そうした人たちのスピーチは,僕たちとは違う生きた説得力に満ちていました。実体験の有無は,その人の語る内容の重さや印象を大きく変えることがわかりました。

東工大参加メンバー
五大陸すべてが集まる世界規模の大会はあまりないので、ディベートに限らず様々な新しいことを学ぶ機会になりました。こちらのサイトに今大会の予選トーナメントで出題された9つの議題が載っています。興味があれば是非ご覧ください。
グローバル理工人コースでは、実に様々なプログラムが提供されています。自分のやりたいこと、目指したい方向さえ定まってさえいれば、それを叶えてくれる機会はたくさんあると思います。ただ与えられるのではなく、なければチャンスを作ることができるのもこのコースの魅力です。
専攻に捉われず、自由に興味を広げて、是非グローバル理工人のもとでそれを実現してください。