学生の活躍
世界中で活躍する所属生・修了生の声現地でしか感じられないことがある
工学部2年 佐々木凌太
工学部制御システム工学科2年の佐々木凌太さんに、「実践型海外派遣プログラム」についてインタビューしました。
Q:「実践型海外派遣プログラム」の話を中心に聞かせてください。スリランカに行ったそうですが、いつですか?
A:2014年9月に10日間行きました。
Q:このコースの単位としては3年生以上に派遣に行ったものが認められていますが(*)、2年生で参加したのはなぜですか?
A:2年生の夏が比較的時間があったので、無駄にしたらもったいないかと思いました。行くだけ行ったら意識が変わるだろうと思って、行ってきました。
Q:10日間でだいたいどういう内容でしたか?
A:最初の2日間ぐらいはスリランカの有名な寺院・遺跡や、スリランカの歴史・文化に関わっているような観光地、世界遺産に行ってきました。そこで、建築学科の学生はスリランカの建築等を見て、僕は制御システム工学科なので、機械的なことに興味を持って見学してきました。滞在期間の中盤からペラデニヤ大学に行き、そこで学生たちと交流をしたり、実際に授業も4~5つ受けたりしました。
Q:どんな内容の授業を受けましたか?印象的な授業はありましたか?
A:交通事故についての講義はとても印象に残っています。スリランカはインフラストラクチャが良くないので、信号があるのに点いていない状況であったり、ルールを全然無視してたりして、それがなぜ起きているのかとその解決策を大学の先生たちが研究していて、その話を伺いました。また、農業の科目で灌漑についての話を聞きました。現地の人達は経験的に水を流す時間とか決めていて、その経験的に流しているのが本当に正しいのかを農業専門の大学の教授が実際に研究して、そのやり方が正しいとわかったこと等を講義で教えてもらい、そこで使用している計測器具を説明してもらいました。
Q:それは現地のスリランカ人の授業に参加してきたということですか?
A:いえ、違います。僕らのために特別にやってくれた授業です。全部英語でやってもらいました。現地は大学が始まっているかどうかぎりぎりの時期だったので。
Q:現地の言葉は何語ですか?
A:シンハラ語とタミール語というのがあります。イギリス植民地時代があったので一応英語を喋る人も多く、教授や大学生は英語を喋れます。スリランカの大学生は、日本の学生とは比べ物にならないぐらい英語がばっちり喋れます。
Q:ペラデニヤ大学では、学生さんとの交流はありましたか?
A:ありました。あとは、研究室を案内してもらい、研究について話してもいました。また、スリランカのスポーツ、クリケットを一緒にやったりもしました。学生さんと一緒に世界遺産を回って、わからないことは全部学生さんに聞いて教えてもらいました。
Q:現地の学生と一緒に移動中にお互い英語で自己紹介をしたと聞いたのですが、現地の学生と日本の学生でプレゼンテーションに違うところとかありましたか?
A:バスの中でずっと喋っていないといけないというルールがあって、ずっとコミュニケーションを取っていたのですが、向こうの学生はいろんなことを話してくれて、こちらは聞く側に回っちゃうことが多かったです。僕らは英語がまだ満足にできないというのもあるんですけど、やはりこちらから話すのも、控えめというか、聞く側になってしまうことが多かったです。
Q:現地の学生さんと会って、初対面で英語でコミュニケーションをとるときに個人的に気後れしたり、不安に思うことはありましたか?
A:今回スリランカの派遣では、控えめになるのは絶対にやめて、つまらないことでも自分で英語で話して会話を続けようと考えていたので、僕は気後れせずに、くだらないこともしょうもないこともずっと英語でいろいろ聞いていました。だからすごく楽しかったです。
Q:現地の人と仲良くなれましたか?
A:はい。何人か学生さん達と仲良くなりました。あと、最後のFarewell Partyで、僕のテーブルがなぜか教授だけになってしまって、しょうがなくて教授たちに話しかけまくりました。あっちの教授は意外に日本語を話す人もいました。
Q:スリランカの人達の、日本に対する興味・関心はどうでしたか?
A:「日本に来たことある?」と聞くと、「行きたいけどいけない」という答えが多かったです。ペラデニヤ大に日本が援助して歯学部を作ったらしくて、日本のことをみんなすごく知っていました。
Q:日本の大学との違いはありましたか?
A:ものすごく違いました。短い期間でしたが、いろいろな影響を受けました。ちょうど訪問中に、学生が大学側に経営学科を経営学部に引き上げろというデモをしていたり、そういう立て看板が大学中のいたるところにあるのを目にしました。クラスの何人かの学生が謹慎を受けて、それが不当としてそのクラス全体で座り込みとかをしているところにばったり出くわしたこともありました。スリランカは大学も含めて教育費が無料です。大学進学率は、日本は50%以上ありますが、スリランカは2%ぐらいしかなくて、そのため彼らは明確な目的を持って大学に通っているのです。それに比べると日本人は、ただ単に大学を卒業すればいいと考えている人が多いと思います。彼らは目的を持っているから、自分たちの将来につながることの障害になるのは排除すべきとし、自分たちですごく行動しているなというのが印象に残りました。自分たちは適当に授業受けているだけなのに、と思いました。自分達ももっと活動的になっていかないといけない、高い目標を持って、もっと自信を持っていくべきだなと、身に染みました。
Q:他のコース対象科目の授業や学びが、現地に行ってみて生きたところはありますか?
A:スリランカへ行く直前に、夏休みに開講している短期集中の英語口頭表現プログラムに参加しました。英語でいろいろ発言しなければいけない内容で、それがすごくためになったと思います。
Q:海外派遣の事前学習ではどのようなことをしましたか?
A:事前学習として、スリランカの教育・文化・インフラストラクチャ等いろいろなテーマを決めて、お互いに発表して、スリランカに行く前に知識を深めました。みんな忙しかったのでそんなにたくさんできませんでした。
Q:佐々木さんは何をテーマにしましたか?
A:僕は教育です。スリランカの教育システムや、大学、義務教育等、いろいろ。現地に行ってから、実際に学生にインタビューしました。引率の先生もスリランカ人の先生がいたので、いろいろ教えてもらいました。話をいろいろ聞いてみると、大学入学が厳しいとか、倍率が高いとか、いろいろな話を聞くことができました。実際に会ったら、学生さんは優秀な人しかいませんでした。
Q:スリランカの教育というテーマで、一番の研究成果はどういうところですか?
A:学生の意識の違いです。義務教育が終わって、高校に入る前に国家試験みたいなレベルを図る試験があって、それを通らないと高校に行けないんですが、その合格率でさえ30~40%。さらにそこから大学に行くのがさらに2%になってしまう。本当に一握りしか行けなくなってしまう状況をくぐりぬけて今いるんだということがわかりました。
Q:以前留学したことはありますか?
A:高2の夏にタイにホームステイで5日間だけ行きました。高校と提携している現地の国立大学があり、僕はここの附属高校出身なので東工大も提携があって、また東工大のタイオフィスもあるので、そこに行ってきました。内容はホームステイと、みんなが受けている授業への出席と、自分たちの研究のプレゼンテーションでした。5日間だから何もできませんでしたが、海外に行くのも面白いと思っていたので、大学に入学して「グローバル理工人育成コース」に所属しようと思い、海外派遣にも参加しました。
Q:将来の方向性は何か考えていますか?
A:大学院を東工大ではなくて外国にしてもいいかな、と少し考え始めています。本当に考え始めたばかりなので、どうすればいいかとか決まっていませんが。もともと高校生のころから、海外・英語に関係する仕事、かつ僕の専門のロボット等機械的なことを扱いたいと思っていたので、海外の大学院で専門を学んで、外資・外国のメーカー企業に入って、日本と関係を持ちたい、日本へ展開に来るのもいいと考えています。日本の企業に入ってから外国に展開ってなると営業寄りになってしまう感じがします。エンジニアでありたいです。
Q:今回の派遣は自分の将来にとってどう役に立ちそうですか?
A:最初このプログラムに応募したのは、メールでプログラムの案内を受け取った時、スリランカ・フランス・フィリピン・アメリカのプログラムがあって、この中で、理由が若干変ですが、おそらく旅行でいかないようなところの方がいい経験になると思ってスリランカを希望しました。参加してみたところ、途上国の状況がわかり、その学生の質や意識の違いもわかり、将来世界で仕事したいとか言っているのにこれじゃだめだと意識が変わりました。帰ってきてからもいろいろ自分で勉強して、英語を勉強し始めて、大学院を外国に行こうかとか先のことも考え始めました。今回フラッと行ったつもりでしたが、意識が変わった点では、今回はとてもいい経験になったと思います。
Q:実際に行ってみたからわかったこと、実践したからこそわかったことはありましたか?
A:行かなきゃわからないと思います。そういう環境に置かれないとわからないことがあります。日本人の大学生は勉強しないとかいろいろ言われますが、実際に身を持って自分がやばいということを実感しました。
* 1,2年生の海外派遣プログラムの参加には「グローバル理工人研修入門」という単位が付与され、実践型海外派遣プログラムの単位とはなりません。