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    マサチューセッツ工科大学(MIT)での交換留学

    マサチューセッツ工科大学(MIT)での交換留学

    環境・社会理工学院 融合理工学系4年 佐藤 八起

    留学を決意したきっかけは?

     交換留学プログラムに応募するのなら推薦していただけるという旨のお話を大学の系長から頂いたのがきっかけです。ただ、パイロットプログラムということで前例が無いという不安がありました。また、留学時期が4年生の後期ということで、卒論や大学院入試などの大きなイベントも控えていたため、応募しようか2、3日悩みました。最終的にはマサチューセッツ工科大学(以下MIT)に交換留学できるチャンスはもうないだろうと思い、ダメもとでプログラムの選考に応募しました。系から推薦を頂けたこともあり、幸運にも交換留学生として採択されました。

    MIT中央にあるドーム

    左)キャンパス内のパブリックアート   右)形が独特なキャンパスの建物

               

    留学にあたっての準備、費用、手続き等

     今回の留学で一番大変だったのが、準備です。大きな関門が3つありました。

     1つ目はTOEFL iBTのスコア取得です。TOEFL iBT100点以上の取得が派遣実施の条件でした。リスニング、スピーキング、リーディングとライティングの4技能を4時間の試験で試されます。これまで受験したことのあるTOEIC公開テストなどとはだいぶ違う試験形式でしたので、試験対策に苦労しました。特にスピーキングについては、東工大のTandem語学パートナー制度を利用するなど、英語を話す機会を増やして対策しました。

     2つ目はVISA等の申請です。交換留学生として派遣される場合はJ-1 Visaを取得します。オンラインで基本的な情報を入力した後、アメリカ領事館に行って申請をします。学士特定課題研究※の真っただ中であったので、書類の準備等に時間を取られるのが少しストレスでした。

     3つ目はMIT側の事務とのやり取りです。必要な情報や書類は自分から連絡をして教えてもらったり、案内してもらったりしたので、見落としているものが無いか不安がありました。現地で滞在する寮がなかなか決まらなかったり、加入が義務づけられている保険の案内がなかったりしたので自分で情報を集めて質問して手続きを進めました。見落としが無いか必死にチェックしたので、だいぶ気力を消耗しました。

     また、学士特定課題研究やTOEFL iBTの試験勉強と同時並行でトビタテという奨学金プログラムにも応募しました。幸運にも奨学生として採択されたので、経済面で余裕ができました。

    <留学にあたり発生した費用一覧>

    • VISA申請料等:4万円程度
    • 渡航費:往復25万程度
    • 予防接種等:100,000円程度
    • 保険料:半期$1300
    • 家賃:月$1000程度
    • 食費:月$400~
    • 交際費:月$250
    • 観光等:月$150
    • 交通費:月$100
    • その他:月$100
    • 出費総額:月平均$2000
    • トビタテ!:月16万円支給+留学準備金25万

    ※学士特定課題研究とは…東工大では学士課程卒業のための必須条件として課せられています。学士特定課題研究の目的は、特定のテーマについて理論、実験、調査、計画等の諸手段を総合し、それまでに養成した学力を結集して専攻科目をより深く理解し、あわせて研究のまとめ方、報告書の作成及び発表の方法等を修得することにあります。

     

    交換留学の概要

     9月の初旬から始まる秋学期及び1月から1か月のIAP(Independent activities period)期間に、MITに交換留学生として滞在できます。所属はCourse22(原子核工学科)です。主な活動は、授業への参加、UROP(Undergraduate Research Opportunities Program/学部生用研究体験プログラム)への参加です。他学生との交流や現地の日本人コミュニティとの交流なども盛んでした。9月初旬は、新歓時期なので特にイベントがたくさんあります。それが落ち着くと授業が忙しくなりますが、月に2、3回は何かしらのイベントがあったので参加してみると良いでしょう。

     学期中はとても忙しいです。“MITで学ぶことは、消火栓から水を飲むようなものだ”と、MITの元学長が言うほどです。講義の情報量がとても多く、講義への予習復習にかける時間も多かったです。特に毎週課されるP-set(課題のこと)に割かれる時間が多かったように思います。起きている間は基本的に何か課題をしているか、何か読んでいるかという生活でした。

    左)MIT元学長曰く“MITで教育を受けることは、消火栓から水を飲むようなもの”

    右)原子核工学科の建物にある核図表

     

     前述のUROP(Undergraduate Research Opportunities Program)というプログラムにも参加しました。これは、学部生が研究室に所属し研究の体験ができるというもので、MITでは多くの学部生が参加するものです。プロジェクトによっては応募条件があったりしますが、Course 22のUROPに関しては原則条件無しと聞いています。自分の周りの交換留学生もこのプログラムに参加し、研究に参加していました。ただ、当たりはずれがあるらしく、全体の1~2割ほどのプロジェクトは中途半端に終わってしまうようです。私のプロジェクトも中途半端に終わってしまったので、少し残念に思っています。

     年明け1月にはIAPがあります。IAP(Independent activities period)期間中には、海外インターンをしたり、学期中にはできない面白い授業を履修したり、思い思いの活動ができるようです。私が見つけたなかで面白そうだと思ったのは、醸造体験、陶芸体験、ホログラム制作、映画鑑賞、ヘビーメタル鑑賞などなどです。結局私はスペイン語を履修しました。MITの語学コース、特にIAP期間中の授業はMIT学生の間でも厳しいと名高いそうです。なんでも、一学期分の内容を1か月で終わらせるスケジュールなのだとか。具体的には、1日3時間、週5日の集中講義でした。

     それでも週末には時間を見つけてボストンやケンブリッジの街を観光していました。MITの学生証で入場無料になる博物館や美術館が多くあり、学生特権を使って入り浸っていました。足しげく通ったのが、MFA(Museum of Fine Arts, Boston)です。古代エジプトの石像からコンテンポラリーまで、幅広い芸術作品を所蔵しているので何度行っても飽きなかったです。クロード・モネの作品が一つの展示室に集められていたり、期間限定のインスタレーションがあったりと、見ごたえ満点でした。ボストンやケンブリッジにはたくさん美術館があります。そのほとんどが学生証で入場無料になったり学割で安くなったりするので、おすすめです。

     

    現地での生活の様子

     9月から11月にかけて、ボストンは良い気候に恵まれます。暑すぎず寒すぎず、快適です。ただ、12月から1月にかけて、段々と寒くなります。滞在中に何度か大雪に見舞われ、ボストンの雪景色を見ることができました。現地の人曰く、一番寒くなるのは2月らしいので、比較的暖かい時期に滞在することになります。ただ、気温表記がFahrenheitなので単位に慣れるために時間がかかりました。70℉くらいが快適で、30℉くらいになると水たまりが凍ります。

     基本的にボストンの物価は高いです。日本より安いのはピザくらい。感覚的には日本の物価の1.5倍から2倍ほどでした。また、サービス系(レストランや美容院など)のお店に行くと、Tip文化があるので商品の値段の1.5割から2割増し払うことになります。ちょっとした外食でも$40とか軽くかかります。お酒を頼むと年齢確認をされるので、パスポートは基本的に携帯していました。

    左)ほとんどの寮にはビリヤード台があり、気分転換によく遊びました。

    中央)某映画の聖地  右)ボストン美術館

     

    グローバル理工人育成コースを含めて、東工大での勉強はどのように役立ったか?

     英語学習支援やオーストラリアへの超短期留学を通して、英語や海外への抵抗が少なくなったと思います。恐らく、わからなかったらどうしようだとか、トラブルに巻き込まれたらどうしようという不安が先に立ってしまってのことだと思いますが、そういう不安がだんだんと小さくなっていったからこそ、今回の交換留学にも応募できたのかなと思っています。なんとかなるだろうからとりあえず飛び込んでみるか、という楽観主義を持てているのもグローバル理工人コースに参加したからこそだと思っています。

     

     

    後輩へのメッセージ

     MITに来てから一番痛感したのは、誰も自分の事なんて気にしないということです。とてもネガティブに聞こえるかもしれませんが、そうではありません。MITに来る前はどうしても周りの目が気になって、発言できなかったり、思うような行動ができなかったり、失敗するのが恥ずかしいと思ってしまい身動きが取れなくなってしまったりすることがありました。

     MITに来て最初のオリエンテーションで言われたのは、「ASK ! Leave your pride behind and ask !」です。わからないことや不安なことがあれば何でも聞け!という意味でしょう。留学の準備中から気付いていたことですが、アメリカの人達は自分から聞かなければ教えてくれません。逆に聞けばよく教えてくれます。ということで、どのような質問をするか、誰に質問をするのかという点がとても重要なスキルになってくるわけです。最初のころはそれでも質問できず、いろいろと失敗をしました。失敗して気づいたことは、誰も自分の失敗なんて気にしていないということです。失敗したら指をさされて笑われる、なんていうことは無いのだなと気づけたのが一番自分の中で大きいと思います。誰も自分の失敗なんて気にしないし、成功もたぶん気にされない。だとしたら自分の好きなこと、やりたいことにどんどん挑戦していこうとポジティブに捉えることができました。もちろん社会生活において周りのことを気にするのは大事ですから、全く気にしないわけではないですが、今までのように過度に気にすることがなくなったように思います。いろいろなバックグラウンド、いろいろな価値観が共存しているアメリカに放り込まれたからこそ気づけたことなのかなと思っています。

     また、自分が動かなければ何も始まらないということも痛感しました。MITには何かをする機会がたくさんあります。多くの学びを得られる講義、研究の機会は当然の事、日本ではできない体験をする機会がたくさんあります。あり過ぎて全部生かしきれないほどたくさんの機会があります。一歩踏み出せばたくさんの学びや経験が得られるだろうと思います。先にも述べましたが、誰も他人の失敗なんて気にしません。面白そうだと思ったならば、飛び込んでみましょう!

     MIT学生の、よくばりな、ハングリー姿勢を学べたのも今回の留学で学んだ点の一つです。彼らのようにたくさんの機会を最大限生かすには、よくばりになって自分から動くことが大切です。最初の一歩は自分から!アクティブに動くことがとても大切ですよ。

    チャールズ川とボストンの高層ビル群

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