学生の活躍

    世界中で活躍する所属生・修了生の声
    iGEM 2014に参加して

    iGEM 2014に参加して

    生命理工学部2年 菱沼雅

    iGEMはThe International Genetically Engineered Machine competitionの略称で、マサチューセッツ工科大学で毎年開催される、合成生物学の世界最大規模の大会です。世界中から4000人以上の学生が参加し、東京工業大学は8年前から生命科学科のチームがInformation Processing部門に参加しています。

    私がiGEMチームに参加しようと思ったきっかけは、大学に入ったばかりの4月のFゼミの講義の中で、前年度に参加した先輩がしたiGEMの紹介でした。大学受験が終わったばかりの私にとって、勉強とは知識や公式を総動員して入試問題を解くための訓練でした。そんなとき、ロミオとジュリエットを演じる大腸菌を設計してアメリカの国際大会で発表してきた、と大真面目に話す先輩方の姿は本当に衝撃的でした。自分は学問をするために大学に来たのだ、という思いがひしひしと込み上げ、心の底からわくわくしたことを覚えています。アメリカで研究発表をするという最終目標よりも、うまくいくかわからないプロジェクトを自分たちで考えて設計し、実際に手を動かして実験を重ねて結果を得ようとする過程で、座学とは全く異なる経験を積むことができる点に魅力を感じ、参加を決意しました。

    準備では、想像していた以上に英語を使いました。大会の概要やルールを記したホームページを読み、不明点・疑問点を大会本部に問い合わせるメールを書くだけではなく、大会本番で行うプレゼンテーションのためのスライドや原稿などもすべて英語で作成しなければなりませんでした。またプロジェクトを掘り下げるための予備調査として、Nature誌やScience誌の論文をたくさん読みました。英語そのものを学ぶ時間はなく、わからない文法や単語はその都度調べて対応していましたが、英語を調べる手間が本来の作業の進行を妨げているように感じることが多々ありました。英語の勉強を予めもっと積んでおけばよかったと後悔することが少なくなかったです。

    iGEM2014東工大チームのプロジェクトは、銀行・企業・消費者のような振る舞いをする大腸菌の設計と、その三者間でシグナル分子をやり取りにより経済のシステムを体現したモデルの構築でした。東工大チームは、大会では8年目となる金賞受賞と3年目となるInformation Processing部門賞という栄誉ある賞をいただくことができました。大会では、他のチームのプレゼンを聴きに行ったほか、ポスターを使用して自分たちのプロジェクト概要を説明したり、他の国のチームと交流したりしました。日常会話レベルの英語の聞き取りは難しくないのですが、英語で知っている単語を組み合わせて自分の意思を発信することが、思っていた以上にとても大変でした。和文英訳では会話のタイミングにとても追いつけません。それでも会話について行こうと、一日中英語で過ごしている日々が何日か続きました。すると思考言語に占める英語の割合が多くなる感覚がありました。おそらく日本での普段の英語の学習方法では得ることのできない体験だったと思います。また、世界各国のプレゼンを聞いて、英語にもかなり訛りがあることを感じました。わたしの個人的な感想ですが、アメリカ英語は耳が慣れているからか聞き取りやすく、イギリス英語では日本人には馴染みのない英単語の登場頻度が高く、他の国も英語はそれぞれの国の言語のイントネーションが色濃く出ている発音の仕方をしていました。世界共通言語として英語を使用するためには、アメリカ英語にだけ親しむのではなく、各国の英語の訛り方に慣れる必要があると思います。英語学習に対して新たな課題を発見することができたことも、今回の留学で得ることができたもののひとつです。

    日本では、いたるところに24時間営業のコンビニがあり、女の子が夜道を一人で歩くことができ、周りの人々も同じ文化的背景をもっています。治安が良く、便利で、マナーが良く控え目な国民性をもつ、こんなにも居心地の良い国は他にないでしょう。だからこそ、日本を出て他の国を知ることは自分自身を大きく成長させてくれます。長い人生、海外旅行はいくらでもすることができます。たいていの海外旅行は代理店がいろいろやってくれるため、大変便利で苦労することはあまりありません。しかし、手間も時間も苦労も体力も必要な「留学」は、学生のときしかできません。簡単な文章すらうまく英語が出てこなくてホテルマンやレストランの店員に迷惑をかけてしまったり、地下鉄の切符を買い間違えて駅員さんに呆れられたり、わたしは「留学」で数えきれないほどたくさんの恥ずかしい失敗をしました。大人になると転び方がわからなくなる、とよくいいますが、失敗して恥をかくことへの恐れから何事も無難で安全な方法を選ぶようになるからだと思います。海外旅行ではなく「留学」として日本を飛び出し、バイタリティがあり余っている学生のうちになるべくたくさん転ぶこと、失敗すること、恥ずかしい思いをすること、心細さや不安に対処すること、自分の常識が世界の常識ではないと痛感すること、すべての経験が大きな糧になります。なりたい自分の将来像を具体的に想像したとき、それに少しでも近づくために糧になる大切な何かを、留学を通して必ず得ることができると思います。

    【東工大ニュース】本学学生チームがiGEM世界大会で最優秀部門賞を3年連続獲得

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