留学レポート
世界で学ぶ東工大生ベトナム超短期海外派遣プログラム(2025年春)ショートレポート
2025年5月2日
- アジア
- ベトナム
- 3カ月未満
- グローバル理工人育成コース 超短期海外派遣プログラム
- ベトナム国家大学ホーチミン市校工科大
- カントー大学
2025年の春休みに実施したベトナム超短期海外派遣プログラムの参加者によるレポートです。
報告者:学士課程4年/ 環境・社会理工学院建築学系
プログラム概要
本プログラムは、東京科学大学のアントレプレナーシップ科目・グローバル教育オプション(GEO)、及びグローバル理工人育成コース「実践型海外派遣プログラム」の一つとして実施されました。本プログラムのテーマとして、「技術が社会課題に貢献している現状を視察すること」を掲げ、その課題として挙げられる「主要産業にも関わらず課題が山積する農業」及び「急激な成長の中で顕在化した廃棄物問題」に着目し、学習を行いました。事前学習を通してベトナムの歴史や文化などを学んだのち、現地でのフィールドワークや施設訪問、学生との交流に臨みました。
施設訪問と見学
プログラム内では、日本企業が精力的に関わるハノイの廃棄物焼却発電プラントを訪れ、廃棄物問題をレクチャーや海外駐留の現場視察を行いました。プラスチックリサイクル村では、現地の人々が世界各地から集まるプラスチックごみの集積と回収を行う現場を視察し、ベトナムと世界が抱える重層的な環境課題が市民の生活まで顕在化していることが窺えました。
また、ホーチミン工科大学内のJICAオフィスやYANMER研究所、さらにはカントー大学のカン先生やハウザン省の農協の方にも貴重なお話を伺い、メコンデルタ地域農業についてやスマート農業の普及実態について知見を深めました。さらに、ホーチミン市で開催された農機具フェス『AGRITECHNICA ASIA』を視察し、各国のスマート農業へ向けた最先端の技術革新を学びました。
並行して、ハノイ・カントー・ホーチミン各地に点在する寺院や博物館・美術館、市場や街並みを巡り、ベトナム戦争で用いられた器具やフランスや中国の影響を受けたベトナム独特の文化・芸術を五感で学ぶことができました。
(左)カントー大学内のYANMER農機具の見学 (右)プラスチック村での大量集積
ベトナムでの生活
気候は比較的日本よりも温暖ですが、北部と南部で大きく異なりました。北部のハノイは朝晩が冷え込み長袖が必須でしたが、南部のホーチミンなどは気温30℃を優に超え、半袖でも日差しが厳しく熱帯らしい気候でした。
食に関しては、各地で泊まったホテル近くの飲食店を回りました。特に現地住民も利用する飲食店は衛生管理レベルが不十分に感じられたものの、フォーやバインミーといった代表的なベトナム北部料理から、現地チェーン店のコーヒー、ラーメンなどの日本食まで、2週間を通してバラエティに富んだ食生活を体験できました。
交通や道路状況も非常に印象的でした。主にバイク利用が多く、初日に訪れたハノイ旧市街では国際女性デーのためさらに人の出が増えていたことも相まって、歩道や側溝には大量のバイクが駐車されており、驚かされました。日本製の機体が多くみられ、自動車産業の勢いを異国の地で体験することができました。
市内の移動は、料金や交通状況を考慮すると少しの移動も配車アプリ「Grab」を用いてタクシーを利用しました。交流学生からは、バイクに乗るときはマスクと長袖が必須と教えられたことからも、現地の人々が実感し対策するほど都市過密化が交通に影響を与えていることが分かりました。
(左)ハノイ市内のカフェ (右)人やバイク・陳列商品で混雑するハノイ旧市街地
学生との学生との交流
今年度は、ハノイ工科大学・カントー大学・グリニッジ大学ベトナム校・ホーチミン工科大学の計4校と交流の機会がありました。
はじめのハノイ工科大学の学生たちとはわずか数時間の交流でしたが、彼らは大変活気があり、当日の夜ご飯も誘っていただきリアルなベトナム大学生生活を追体験できました。
続くカントー大学も短い時間でしたが、お互いの国のお菓子を交換したり英語で楽しく交流ができました。
TAのフイさんのお姉さんを通してお招きいただいたグリニッジ大学では、デザイン系学生とともに、市民のゴミ分別を促す画期的なゴミ箱のデザインを考えるワークショップに参加しました。デザイン・ビジネス・テクノロジーの考え方を持ち寄り、ごみ問題に関する有意義な討論ができました。
昨年度に引き続きホーチミン工科大学では、両大学の先生によるレクチャーや現地での経験をもとに考えた適用性をふまえ、有用なリサイクルシステムのアイデアワークショップを行いました。ある班では、ベトナムに多いシーフードレストランから回収したエビの殻から、有効成分『キチン』を利活用するスキームを発表し、ベトナムに根付いたリサイクル課題の示唆と知見を与える実りある議論となりました。また休日では観光に連れて行ってもらったり、お互いハマっているアニメや戦闘ゲームの話に花を咲かせたりしました。5日間を通して英語で意見を交わし一つの提案に仕上げた経験は、私たちの成長に繋がったと思います。
(左)ハノイ工科大学での自己紹介・交流 (右)集合写真 ホーチミン工科大学にて
まとめ
本プログラムを通じて、参加学生各々が設定した目標を達成し、国際的な交流に今後も挑戦していくための教訓が得られたと思います。英語での日常会話やワークショップを通して考えの伝え方を掴むことができただけでなく、交流学生のベトナムに対する知識や文化愛を通して、かえって自国の歴史や文化を知ることの大切さを再認識できました。
また、JICAをはじめとする各施設を視察する中で、日本の企業や団体による支援や共同開発が進むことを予感するとともに、ベトナムで意欲的に活躍する駐留日本人の思いや覚悟、日常生活を知ったことで、私たちがグローバルで活躍するイメージを自分事として明確にすることができました。
今年度初めて交流した大学も多く、東京科学大学とベトナムの各交流大学の間における、将来の友好的な交流に資することができました。本渡航経験を通して知見を深め、グローバルな課題解決のための視座を高めることができたと思います。