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    "違い"の大切さに気づかされた

    "違い"の大切さに気づかされた

    工学部4年 山下慶太郎

    工学部制御システム工学科4年の山下慶太郎さんに、「科学技術を用いた国際協力実践プログラム」についてインタビューしました。


    Q:「科学技術を用いた国際協力実践プログラム」について伺います。該当する科目はいろいろありますが、山下さんは「英語で学ぶ日本事情」、「文化人類学」、「コミュニケーションと国際関係」、「創造設計第一・第二」を受講されていますね。このコースで必要だから受けた授業はありますか?

    A:もともと自分が受けたい授業とコースの授業が一致していたので、自分の専攻の授業は必修みたいなものですが、文系科目、特に「英語で学ぶ日本事情」や「コミュニケーションと国際関係」はもともと興味があって、ちょうどいいと思いました。

    Q:このプログラムは、留学生を交えた共同作業、ジャーナリスト・エンジニア・デザイナーなど各界の第一線で活躍する専門家による講義などにより、グループワーク・ディスカッション・ワークショップなどを実践、自身とは異なる個人や団体・国・文化の違いを越えて共同活動できる能力、複合的な課題についてその本質を見極めて解決策を提示できる能力、みたいなものを身に付けることになっています。課題発見・解決力、異文化理解力、チームワーク力という言葉を聞いて、ピンとくるところはありますか?

    A:自分が受けた授業の中でおそらくすべてに該当するのが「英語で学ぶ日本事情 Topics on Japan」だと思います。受講生の大半が留学生で、授業は英語で行われます。エンジニアリングやサイエンスではなくて日本の文化についての内容であり、日本人ならばかつて教わったことがある内容です。授業の中には、留学生のそれぞれの国を紹介するグループワークもありました。自分はフランスに行ったことがあったので、フランス人と一緒にフランスのことを紹介しました。また、日本について何か一つトピックを探してきてそれを調べて発表するグループワークもありました。

    Q:それぞれの国の紹介は、どういうテーマで紹介しましたか?

    A:それは全般的な紹介でした。自分が担当したパートは、フランスの教育システムで、日本と違って面白いところがありました。去年の実践型海外派遣プログラムでパリ派遣に参加していたので、その時にフランスの教育システムは日本と違うことを調べていました。その後この授業でフランスのことを発表することになり、その派遣で調べたことをまとめて発表しました。

    Q:日本のトピックは何を取り挙げましたか?

    A:日本は先進国の割に英語ができない、という問題がチーム内で共通認識がありました。なぜできないのか?では問題が広すぎるので、日本の英語教育にフォーカスしてみることにしました。グループは5~6人で、そのうち一人だけ日本人、基本的に同じグループに同じ国の人が入らない構成でした。僕のチームも日本人は自分一人で、他はフィンランド人・スイス人・アメリカ人・インドネシア人でした。

    Q:チームワーク力が醸成された実感はありましたか?

    A:自分たちの発表が全体の最初の週だったのでもともと期間が短くて、3週間で発表を準備する必要がありました。フィンランド人の学生がリードしてくれて、一つの授業の発表の割にはだいぶがっつり取り組みました。ミーティングも5~6回開きました。東工大にいるイギリス人のホープ先生は、かつて他の大学で英語を教えていた方なので、先生にインタビューもしました。僕は、自分の出身高校がここから近いので、出身高校の仲のいい先生にお願いして、英語の授業の見学、高校生や先生へのインタビューも実施しました。こんなふうにメンバーそれぞれでパートを分けて作業をして、資料を作成しました。

    Q:日本教育についての理解というより、一つのテーマに対していろいろな国の人がいろいろな手法で取り組んだり、いろいろな考え方があって、そういうものに触れることが異文化理解だと思います。実際にそういう活動をやってみて良かった点やためになった点は何ですか?

    A:他の授業のグループワークでは日本人しかおらず、中国人か韓国人の留学生がいるかいないかぐらいです。が、この授業のグループワークは異色で、考え方や行動といったバックグラウンドが違う人たちが集まって活動し、その中で一つの成果物を出せたという経験ができたことが良かったと思います。

    Q:バックグラウンドが異なる様々な国の人と活動して、印象に残っているエピソードはありますか?

    A:今回は英語教育がテーマだったため、違う国、ここではフィンランドと日本の英語教育の比較が面白かったです。例えば、日本の英語教育では、受験勉強が中心になるので、筆記や読解にフォーカスを置いていることが多い。フィンランドの場合は、スピーキングも重視し、入試の問題も英語らしい英語を使うよう仕向けるものが多いそうです。実際に問題を見せてもらいましたが、そういった問題が多かったです。また、彼らはスウェーデン語も必修で、みんな複数の言語を勉強しているという話も面白かったです。

    Q:いろいろな国の人が集まって最後は発表まで持って行かなければならない、そのためには、意見の衝突はないとしても、バックグラウンドが違う故にうまくやっていくために必要だとおもったことは何ですか?

    A:大事なことは、違うということを受け入れる、理解することだといつも思っています。東工大は留学生が1200~1300人もいます。自分は他の学生と比べて、留学生との交流がすごく多い方だと思いますが、「留学生がいるから交流する」というより、「結果的に友達が留学生」という感じです。そういう環境なのに、あまり留学生と交流していなかったり、日本人しか友達がいない人が多い。ある時友達と話していると、「違うから面倒だ」と誰かが言っていました。そうかもしれませんが、違うということが当たり前だと思ってしまえばいいんです。違うから面白いこともあります。日本人と外国人を分ける事自体好きではありませんし、違うからこそ刺激を受けられます。日本人学生と話している時には得られないような刺激があるような気がします。

    Q:将来、例えば途上国で課題があって、理工系の技術で解決できるとして、いろいろな国の人とチームを組んで解決に当たるという場面もあるかもしれません。そういうことを想像した時に、このコースで役に立つような経験はありましたか?

    A:このプログラムだけに限りませんが、具体的な例を挙げると、インドネシア人の学生はイスラム教徒が多い。イスラム教徒は毎日お祈りをしなければならない。これはメーカーでは有名な話らしいのですが、お祈りする時間は仕事ができないし、仕事をさせるわけにもいかない。そういうところでも折り合いをつけなければいけない場面がたくさんあるはずです。外国人と一緒に仕事をしていくにあたってそういうことにいちいち反応していたら先に進めません。そういう違いがたくさんあります。

    Q:コースの授業を受けて他にためになったことはありますか?

    A:「コミュニケーションと国際関係」は、すごく良かったと思う点が多くありました。毎週プレゼンテーションやディベート、ディスカッションが課されました。コミュニケーションのテーマが与えられて、グループ内でディスカッションする。授業の半分ぐらいが実践的な感じの授業でした。それらを毎週繰り返すことで、自分の意見を言ったり表現したりすることの練習になりました。授業のキャッチフレーズが「自覚・自信・自己主張」で、そういうマインドが鍛えられた気がします。

    Q:ディスカッションやディベートをするときに、自己発信と同時に聞くということも必要だと思います。どうすると外国人の人と壁なくスムーズにコミュニケーションが取れると思いますか?

    A:端的に言えば、自信かもしれません。confidentというか、勇気というか、自信。例えば、留学生とあまり関わりがない学生は、英語が…と言います。しかし、「Topics on Japan」のグループワークでは英語圏の学生はアメリカ人しかいませんでしたし、日本人も大学までいると中高6年と大学卒業まで含めて10年英語を勉強していてそれなりに知識はあるはずです。最初は厳しいかもしれないけど、喋ろうと思えば、ある程度頑張れば、流暢でなくても喋れるようになるはずです。英語ができないというネガティブな暗示ではなくて、実はできるんじゃないかという自信や、もうちょっと自分の意見に自信を持つことが大事だと思います。ただ、だからと言って我を通すっていう意味ではなくて、もちろんフレキシブルに受け入れるときは受け入れることも必要です。最初のfirst stepを踏むための自信が重要だと思います。自分の周りでもfirst stepが踏めた人はもっといろいろできています。first stepを踏み出すために大事なものは、自信だと思います。

    Q:このプログラムで「課題発見・解決力」もテーマになっていますが、「課題発見・解決力」にプラスになったところはありますか?

    A:「コミュニケーションと国際関係」では、批判的観点(critical thinking)の話が少し出てきました。例えばディベートのセクションでは、ある課題が与えられて、それを考える事自体も課題発見の練習にはなりましたし、相手が出した解決策にも、与えられた課題と相手の解決策の間に問題を見つけてディベートで批判することもありました。逆に自分の解決策に問題がないかを確認しなければならず、それも練習になりました。「Topics on Japan」でも、「日本について」というすごく大きなテーマから、自分たちの場合は英語教育という課題を見つけて、課題発見につながる実践的な活動はあったと思います。

    Q:勉強のための勉強というよりは、実社会や実際のものに即したテーマが出てくるんですね?

    A:実社会には僕自身まだ出ていないのでわかりませんが、how toを習うだけではなくて、実際に自分たちで実践する場面がありました。「創造設計第一・第二」はコンテスト形式で、テーマに対してルールがあって協議されるため、いかに良い点を取るか・勝つかを解決しなければならないので、課題発見を否が応でもやらされて解決していくという感じでした。

    Q:「グローバル理工人育成コース」以外の科目で、グループワークをしたり学外で調査して課題解決するような授業はありますか?

    A:自分が知っている限りではあまりないです。もともと社会科見学みたいなものが組み込まれている授業もあるとは思いますが、あるグループ単体で学生が主体的に企画・行動する授業はあまりないです。グループワークが多いことは、このコースの特徴かもしれません。


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