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    技術を活かすため、何が必要かを実感

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    工学部2年 大野馨子

    工学部建築学科2年の大野馨子さんに、「国際意識醸成プログラム」についてインタビューしました。


    Q:「国際意識醸成プログラム」についてお聞きします。大野さんは「グローバル理工人入門」を受講しましたね。グループワークで留学生からその国の状況を聞いて、課題を発見し、解決策を提案する、という内容ですが、どの国のどんな課題を取り上げましたか?

    A:TAがインドの方だったので、インドについて調べました。衛生問題や食糧問題等、パソコンでいろいろインドの問題を調べてみたところ、初めて世界の問題に気づけたという感じがしました。結局、交通問題を取り上げることにしました。具体的な調査方法は、パソコンで調べるほかに、大学に入ってから初めて英語の文献も調べてみました。それで足りない部分は、東工大のインフラ問題を専門にしている方を調べてアポイントを取ってインタビューしたり、富士通総研でインドのインフラ問題を扱っている方がいるのでアポイントを取ってインタビューしたりしました。また、私のグループには、お父さんがJETROに勤めている人がいて、そのつてでデータを調べたり、その子自身が冬休みにインドに行って調べたり写真を撮ってきたりしました。解決策として理想や正論等わかっていることをいうのは簡単ですが、調べてみて話し合っているうちに、自分たちには限界があるにしても具体的な提案をしたい、ということになって、具体的に調べることが大事だと思って取り組みました。現実感のない空想の解決策になってしまわないように気を付けました。

    Q:コース全体でこのプログラムはスタート地点になっていますが、このプログラムはどんな能力を付けるプログラムだと感じましたか?

    A:国際的な問題について、もちろん新聞等で情報を知ることはできますが、こういうコースに所属しないと、時間をかけて調べたりする機会がありませんでした。また他のグループの発表を聞いて、こんなことが起こっているということを知らず、もっと考えなければいけないと思いました。国が違うと面白いことが本当に多くて、海外に行ってみたいと思うようになり、この間の夏休みにも海外に行ってきました。

    Q:例えば文化や宗教、生活環境などで、印象的な違いは何でしたか?

    A:インドの交通問題で、事故に対する意識の違いが全然違っていました。日本では、例え故意でなくとも、事故を起こした加害者の方が悪い、となりますが、インドや他のアジア諸国では、歩行者が車にひかれないようにするのが当たり前で、事故を受けたらそれは仕方ないという考え方だそうです。自分が悪くないのにという意識がない、それが一番印象的でした。インドのチュンナイは世界で有数の交通事故が多い都市ですが、その意識が変わらない限り、事故の件数は減らない気がします。意識がないので事故の届け出をしないケースもあって、本当はもっと隠れた事故も起きているそうです。意識を変えないと事故自体が減らない。交通設備等、先進国が途上国にシステムを整備したところでどうにもならない感じがします。

    Q:意識の違いだから、いいとか悪いとかではなくて、日本や先進国が正しいとか、インドが遅れているとか、ということではないと思いますが、大野さんはどう思いますか?

    A:国が違うとシステムも全部違うので、事故が悪いとは一概に言えないと思います。この前もスリランカに行ってきましたが、やはりインドの写真で見たのと同じような光景でした。バスが来たら走って飛び乗るし、車線も無視するし、バイクに3人乗り・4人乗りは当たり前だし、人もいっぱい車道を歩いている状況でした。実際、自分たちが乗っていたバスも1回こすったことがありました。でもそういうことが、私たちからすると気になりますが、本当に気にならないというか、その国ではすべてが違うので、それが一概に遅れているとか悪いとかそういうものではないと思います。

    Q:ただそういう現状があるから、今例に出していただいている交通事故や交通渋滞については、意識を変えてほしいと思ってしまいますね。彼らの意識を変えてもらうためには、私たちがどういう考え方や言い方をするのが必要だと思いますか?

    A:インドの交通事故を減らそうと私たちが本気で考えるのであれば、ちゃんと意識を持ってもらって、掲示板等で自分が遭った事故の被害等を周りの他の人に発信していくようなチャンスが必要かなと思いました。

    Q:大野さんはおそらく日本でずっと生活してきて、その中で培ってきた考え方を持っていますよね。ある意味ではそれは固定観念と呼べるものですが、このコースではそうした日本の中で培った固定観念にとらわれず、物事を見ていきましょう、という目的があると思います。このコースに入ってから、自分の固定観念の変化を感じることはありましたか?

    A:もしこのコースに入っていなかったら、全然違っていたと思います。インドのプロジェクトに半年間取り組んだことで、それまで見たことなかった英語の文献を調べたり、企業の方にインタビューに行ったり、英語のサイトを見るようになったり、いろいろな経験をしました。あと、他の国について調べるようになって、文化の違いを大事にしようと思うようになりました。途上国に行くと、日本の良さも途上国のよさも両方感じて、いいところも悪いところもあるなと思い、もっといろんなことを知りたいと思うようになりました。もっと他の国にも行ってみたいと思っています。

    Q:海外へ行ったり、海外のことを勉強してみて、これまで日本にずっといたからこういう固定観念を持っていたと気づいたことはありますか?

    A:日本はやはり恵まれていると思います。日本は本当に隅から隅まですべての仕事が専門家に任されているというのを感じました。スリランカでは、みんな自給自足に生きていている人が本当に多くて、家も全部自分たちで建てている人がいます。日本では専門家が構造計算や災害のリスクを考えて設計しますが、スリランカでは、昔の日本と同じだとは思いますが、柱から自分たちで建てますが、柱や構造材となるものが太さも種類も違うものを使っている家があちこちにありました。日本の整った環境で過ごしている私にはすごく衝撃的でした。極端な例かもしれませんが、そんなに神経質に細かいことまでこだわらなくてもいいのかもしれないと思いました。

    Q:もう今や、先進国が途上国に何かを教えたり施したりする時代だと思いますが、ただ問題はいろいろある。先進国には先進国なりの問題があって、途上国には途上国なりの問題がある。そうした問題を解決するためにはどうすればいいか、少し思い浮かぶことはありますか?進んだ技術をただ渡せばいい、移せばいい、ということではおそらくないと思いますが。

    A:とても難しい問題ですが、問題を問題ととらえるかどうかが重要だと思うので、問題も全部含めてその国の文化で、そういう国の背景を尊重しようとすれば、その問題を解決しようというよりは、その国をもっと良くしようとすることが大事だと思います。日本だけを見ていると問題と思えてしまうことが、現地に行ってみるとそんな問題でもないと気づくかもしれないので、現地に行くことが一番いいと思います。日本の交通事故を減らす技術や自動車、インフラがありますが、現地のことを知らずにそのまま導入しても、方向性がずれてしまうことがあると思います。

    Q:大野さんは現在建築学科ですが、将来は海外や途上国で建築の設計の仕事をしてみたいと思いますか?

    A:スリランカに行く前は、英語が好きだったので、外国人と一緒に働く仕事に就きたいと思っていました。スリランカに行ってみて、ヨーロッパの植民地時代の影響も残っている整備された町並みの一方で、自給自足の柱の家があるという状況で、ここで地震が起きたらどうなるのだろうと考えた時に、ちょっと不安になりました。現地の人々の生活を壊したくないので、災害が起きても人々の生活を壊さないように技術で貢献できたらいいなと思い、興味を持ちました。

    Q:授業の最後のプレゼンではどういう解決策を提案しましたか?

    A:日本の交通事故を減らすための自動車や信号、シミュレーションシステム等を調べた上で、やはり意識の問題になりました。日本の技術の導入も解決策の中で提示しましたが、最後には意識の問題にも触れて、日本とは違う部分があります、というふうに締め括りました。


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