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【開催報告】ジョージア工科大学教員による「グローバルリーダーシップ実践 2024」を実施

2024年8月26日

グローバル教育実施室は、「2024年度 グローバルリーダーシップ実践ENT.L457 (LAW.X425)」を6月11(火)~28(金)まで全11回の講義のうち第4回までをオンラインで、第5回以降を対面で行いました。協定校であるジョージア工科大学(米国ジョージア州アトランタ)のリーダーシップ教育開発(Leadership Education and Development) プログラムディレクターであるステイシー・ドレマス講師が教えるこの集中講義は、2018年度から開講され、7回目となる今年度は12名の学生が履修しました。ドレマス講師のリードのもと、履修生はグループディスカッションを中心として、クラスメートと積極的な交流を展開しました。「グローバルリーダーシップ実践」は、ワークショップや事例研究、ディスカッション、自己分析などを通じて、グローバルな環境で自身や周囲の人々の価値を認識し、目的を実現するためのリーダーシップに必要な要素を学ぶことを目的としています。本科目は、東工大グローバル理工人育成コース上級の選択必修科目ともなっています。

 

国際色豊かな履修生

12名の履修生の出身国は日本6名、スウェーデン2名、インドネシア1名、シンガポール1名、中国1名、パナマ1名でした。3名のTAはインド、フィリピンおよびキプロス出身で、教員はアメリカ人、ゲストスピーカーはベトナム出身の本学卒業生です。日本人学生は留学経験者や将来留学を希望する人が多く、グループワークやディスカッションに活発に取り組みました。

ジョージア工科大のステイシー・ドレマス講師(後列右から3番目)、TA(ティーチングアシスタント)および履修生たち

 

参加型の授業・アクティブラーニング

この授業は、ジョージア工科大学で実践されているリーダーシップの授業を基に、過去6回の履修生からのフィードバックを反映し、内容を発展させたものです。

アメリカ型の授業では、予習と復習をこなして、授業では積極的な発言が求められます。本授業も、授業開始以前から、リーダーシップに関する課題図書を2冊読み、リーダーシップやチームワークに関するエッセイ等の提出が課されました。また、履修生には授業に先んじてオンラインでオリエンテーションを行い、計11回の授業内容のポイントや課題をまとめたマニュアルを配布しました。マニュアルを事前に読んでおくことで、日本人学生もグループワークとディスカッションに率先して参加できました。

(左)オンラインでのオリエンテーションの様子
(右)対面での講義の様子

 

授業はすべて英語で行われました。前半のオンライン講義では、学生の参加を促す学習プラットフォーム「Pear Deck」で、今日の気分や教員の問いに対して履修生全員が意見を投稿し、クラス内で共有しました。休憩時間には出身国で人気のある曲をかけて紹介し合い、異文化交流を継続しました。また、対面での講義の前に多様な文化背景を持つ履修生同士が理解を深めるため、「100枚のカードを用いて自身が重要だと思う価値観を選択する自己分析ツール」をオンライン付箋、ホワイトボードの「Miro(ミロ)」を用いて行いました。

各々の価値観について「Miro」上で共有するグループワークの様子

 

 

異文化でのチームワークから学ぶ

後半の講義では、履修生が講義室に集まり、チームワークについて学習しました。このセッションでは目標実現のためにメンバーの長所や強みを生かし、協力して取り組むことが不可欠である、という前提を共有します。異文化および分野横断的な環境の中で協力し、課題を解決し調整する能力を身に付けます。”Use What You Have”というセッションでは、その場にある段ボールやペットボトルなど様々な10の素材を使って、チームのアイデアをもとに、世界の問題を解決する画期的なシステムのプロトタイプを作ることに挑戦しました。各グループは、「CO2排出を抑え持続可能なエネルギーを生産する人工光合成装置(Artificial photosynthesis device)」「観光客が駅で迷わない装置(Tourist-friendly Station Board)」「野良猫を悪天候など様々な被害から守るシェルター(Homeless Cat Shelter)」といった独創的な作品を協力して作り、共通のゴールを達成するために必要な方法を習得しました。

 

グループで考案したシステムのプロトタイプ (左)Tourist-friendly Station Board(中央)Homeless Cat Shelter(右)Artificial Photosynthesis Device

 

また、各国のリーダーシップのスタイル(平等主義、階級主義)について、その国の歴史、文化、習慣を前提とした違いについても学びました。組織内での意思決定の方法は国によって大きく異なっており、各国のリーダーシップスタイルの特徴と、その中で起こりうる意識的あるいは無意識の偏見への対処法についても学習しました。

 

チームビルディングのセッションでは、グーグル合同会社に勤務する本学卒業生のミン・グエン(Minh Nguyen)氏がゲストスピーカーとして参加しました。ミン氏の実体験に基づく日本企業とグローバル企業の比較や、異文化バイアスの具体例、また様々な環境の中で自分の能力を最大限に活かし目標を実現するためのヒントを履修生は聞くことができました。

 

また今回は新たな試みとして、これまでの講義で学んだ事柄についての確認をグループ対抗の「レビュークイズリレー」形式で行い、各グループは答えを導き出すために協力し合い、熱戦が繰り広げられました。この順位によりプレゼンの順番を決めました。

(左)Minh氏による講義の様子
(右)レビュークイズの様子

 

最終発表セッション

 最終日には3グループが、それぞれ世界各国の著名なリーダー2名および身近なリーダー1名を選んで事例研究を行い、相違点やリーダーシップに必要な要素について分析を発表します。各グループは著名なリーダーとして、ウラジミール・ゼレンスキー(Volodymyr Zelenskyy)ウクライナ大統領、小池百合子東京都知事、原 晋 青山学院大学陸上競技部監督、 毛沢東(Mao Zedong)元中華人民共和国国家主席、エヴァ・モバーグ(Eva Moberg) 作家、思想家等を著名なリーダーとして挙げ、彼らのリーダシップスタイルをこれまでの事実に基づいて分析しました。またあるグループは身近なリーダーとして益一哉 東京工業大学学長に直接インタビューをし、同学長が直面する課題、またそれに対処するリーダーシップの手法を分析し、上記の著名なリーダーと比較分析しました。これらのリサーチをもとに、各チームは後半で、リーダーとなった際に適用しうる、異文化の環境で機能する効果的な組織運営のシステムを提案しました。

(左)益学長のリーダシップについて分析するスライド
(右)最終プレゼンの様子

 

履修生は最後に、学んだことを今後どのように自分の将来のキャリアに活かしていくかを具体的に示し、メンバーと共有しました。教員はこの集中授業が終わった後も履修生の成長、学びについて個別に、フィードバックします。

 

履修生はオンライン講義を経た後、クラスメートと実際に顔をあわせることにはじめは少し緊張していましたが、クラスの内外でのグループワーク等を通して多様な文化に属する参加者と交流を深め、オンラインおよび対面での講義を通して、場所を選ばない国際協働の方法を学ぶ集中講義となりました。

 

グローバル理工人育成コースでは引き続き、ジョージア工科大学に約2週間訪問しリーダーシップについて学ぶ短期留学プログラムとして「ジョージア工科大学リーダーシッププログラム」も2025年3月に開催予定です。今後も世界の企業、大学、研究所、国際機関など、様々な分野で活躍できる人材を育成するためのカリキュラムを企画・提供していきます。

 

関連URL

Global Leadership Practice 2023開催報告

ジョージア工科大学リーダシッププログラム2024春 報告書

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